物理のページ(2014年度)

【第48回】第47回の解答・解説 (2014/11/21)

研伸館 物理科の米田 誠です。強者の戦略ウェブサイトの物理のページ、第48回目は第47回目で紹介した『2014年度 お茶の水女子大学 前期日程』からの出題、「シュテファン・ボルツマンの法則」に関する問題の解答解説+αです。

第47回の解答・解説

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【第47回】シュテファン・ボルツマン (2014/11/14)

研伸館の米田 誠です。強者の戦略ウェブサイトの物理のページ、第47回目は『お茶の水女子大学 前期日程』からの出題です。この問題は高校物理では扱われない“シュテファン・ボルツマンの法則”という黒体放射に関する法則(これも高校物理外ですね)がテーマとなっています。もちろん、それらに関する特別な知識は問われず、『高校物理で学ぶ基礎知識に基づいて問題文の指示を満足する解答を捻り出す力』が問われています。いわゆる『論理的思考力』の有無が問われます。2014年の入学者のうち満足に得点できた人はそんなに多く無かったと思われますが、是非挑戦してみてください。

(追記:研伸館 内多講師によると、「気象予報士試験」の必須学習項目だそうです。)

シュテファン・ボルツマン

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【第46回】第45回の解答・解説 (2014/08/15)

第45回に引き続き、藤原です。第46回目は第45回で紹介した問題の解説です。

今回の問題について、結論は知っている人も多いかもしれません。

一様に帯電した球殻内の電場は、
全ての点において大きさ0。

ただ本当にその様にみなして良いかどうかの確認は、高校物理では省略されています。

もちろん入試本番では制限時間がありますので、細かく導出している時間はありません。本番では結論を自明とすることが要求されます。しかしこのページでは理解を深める為に、敢えて普段の授業では説明に時間を割けていない、高校範囲「クーロンの法則と電界の重ね合わせ」に基づいた導出を見て頂き、結論に納得してもらえたら、と思います。

第45回の解答・解説

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【第45回】球殻上の電荷 (2014/08/05)

研伸館の藤原です。強者の戦略HP 物理ページ第45回(問題編)、第46回(解答編)を担当させてもらいます。

この原稿は2014年の夏に書いています。今年上半期で最も興味深いニュースは「STAP細胞」でした。「STAP細胞はあります」というコメントは、響きの良さからかテレビや雑誌、ネットなどで結構取り上げられていて、今年の流行語になるかも知れません。

ある法則や現象が「ある」または「ない」という事を他の人に納得させる事はなんて難しいんだろう、とニュースを見ながら哲学的に感じたりします。理科の諸法則の検証は「理論」と「実験」の両面からなされますが、素人ながら調べてみると「STAP細胞の存在」は従来の生物学の体系とは少し異なる理論体系から来た概念で、理論的に納得している人は少数派の様です。だからこそ「発見された」という実験報告は、生物史に残る大発見と讃えられましたし、その実験データの齟齬に関しては、徹底的な追求を受ける騒ぎになったのだと思います。

困難な道だからこそ、逆に新しい概念、存在を認めさせた偉人はすばらしいなぁと感じます。特に電磁気分野の目に見えないものについて、「電場、磁場はあります」という事を納得させた偉人はとてつもないな、と考えたりします(ガウス、マクスウェル、ファラデー、ウェーバー……、一人の功績ではありませんね)。

今回の掲載問題は電磁気分野の創作問題です。多くの高3にとって夏は電磁気をつめていく時期だと思いますが、その分野について「教科書や問題集などでは、自明にしていること」を確認したいと思います。

結果として物理よりもかなり数学的な問題になってしまいました(東大後期の総合科目IIなどでは、このような出題がありえるかもしれません)。誘導文を読んでいけば、私が何を確かめようとしているか理解してもらえると思います。挑戦してみてください。

球殻上の電荷

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【第44回】第43回の解答・解説 (2014/05/09)

第35回の問題に挑戦し、第36回の解答解説を一読した人にとっては、この問題は多少取り組みやすかったかも知れませんね。特殊相対性理論では、「静止している観測者と運動している観測者とでは、時間の進み方が異なる」ということが重要なポイントでした。本問でも、静止系(K座標系)とそれに対して速度Vで運動する系(K'座標系)を考え、それぞれの系の時刻をt、t'と異なるものとして扱っていました。上記の事実を知っている人にとっては、「ふん、ふん、そうだね」と思いながら読み進めていける部分です。

(もちろん、知らなくても、「文章通りに受け止めておいて、それを信じて(言い換えれば与えられた理論・公式を用いて)解いていく」(第36回参照)の精神で解いていけば問題ありません。)

しかしながら、本問については、さらに踏み込んだ議論を展開していたことが読み取れたでしょう。問題文の最後にある通り、「時間と空間が混ざること」です。

今回は、このことについて簡単に解説を加えましょう。

第43回の解答・解説

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【第43回】特殊相対性理論 (2014/04/25)

物理講師の内多です。ここ数年、春になると登場していますね。第43回を担当させて頂きます。

今回は、2013年度入試より新設された大阪大学理学部前期試験「挑戦枠」の「専門理科[物理]」から出題します。「挑戦枠」は、2012年度をもって廃止された理学部の後期試験に替わる新たな試験で、理学部入試改革の目玉、と言えるでしょう。詳しくは大阪大学のウェブサイト等を見てもらえればよいのですが、ごくごく簡単に説明すると以下の通りです。

「挑戦枠」を受験する受験生は、「一般枠」で指定される試験科目に加えて、「専門数学」「専門理科[物理]」「専門理科[化学]」(以下、専門科目とよぶ)のうちから指定された一つを受験する。その専門科目にて所定の点数(配点300点中150点以上)を取った者のみを対象に、挑戦枠の配点にて成績上位の者が、「一般枠」の受験生よりも優先されて合格者となる。(「挑戦枠」で合格とならなかった者は、「一般枠」受験の者とともに、改めて「一般枠」での配点で合格者を決定する)

ポイントは、専門科目で150点以上取れなければ他の試験科目でどれだけ高得点を取っても「挑戦枠」での合格はできないこと、そして、たとえ「挑戦枠」で合格できなくても、専門科目以外の成績が良ければ「一般枠」で合格できる、ということです。

というわけで、ある意味「ダメもと」で受験できる制度ですので、初年度は「とりあえず受けてみます」と宣言して受験した人もちらほら見かけました。私自身も、どのような形の試験かまったくわからなかったので、「まあとりあえず頑張ってこいよ」という感じで送り出しました。

そして、受験生から問題をもらっていざ解いてみると…。感想は「ああ、これ、並大抵の物理力じゃあ合格は不可能だな」でした。問題自体は感動的で、大問3問のうち、第1問では主に受験生の読解力、思考力を測り、第2問では主に微積を用いた数学的解析力を問い、第3問では主に高校物理学習に対する真摯な姿勢を確認し(この世代では学習がおろそかになりがちな原子物理の典型的な問題)、という形で、よく練られた良問ばかりです。そう、良問ばかりなのですが、それぞれのレベルが非常に高い!大阪大学は本気でしたね(笑)。初年度だけを見れば、正直、「挑戦枠」に特化した勉強をすることはおすすめできません。「挑戦枠」で合格する人はきっと、普段から物理に強い関心を持ち、疑問が浮かんだならば時間を惜しまず深く考え、自力で解決することを繰り返してきた人でしょう。そして、大阪大学が「挑戦枠」で望む人材は、正にこのような人材なんだ、ということなのでしょう。

さて、前置きが長くなりましたが、問題は、「専門理科[物理]」の第1問の後半部分です。テーマは「特殊相対性理論」。そう、1年前の第35回の続きです。第35回の京都大学の問題では主に「一般相対性理論」がテーマでしたが、今回は「特殊相対性理論」。これを、深く味わってもらいたいと思います。(なお、わかりやすくするため、問題番号および図の番号は実際の試験から変更しています)

特殊相対性理論

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