東京大学 文科III類 2007年現役合格

S.O.さん

S.O.さん

出身高校
灘高校
進学大学
東京大学 文科III類

Q1. 大学の講義について教えてください。

大学の時間割
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1限 ――― ――― ―――
2限 ――― 言語態理論 言語情報分析演習
3限 比較芸術論演習 ――― 英語
4限 英語(作品購読) 言語態理論演習 ―――
5限 ――― 言語態理論演習/アメリカ文学テクスト分析 ―――
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1限 西洋古典学 ――― ―――
2限 複合系計画論 ――― ―――
3限 言語情報コミュニケーション論演習 ヨーロッパ地域文化論 ―――
4限 ――― 英語 ―――
5限 ――― ――― ―――

月曜日の過ごし方:週末に飲み会が開かれたときなどは、授業が始まるまでだらだらと寝てすごしていることが多いです。授業後は、柔道の練習をしています。

火曜日の過ごし方:この日は、授業の課題が多いのでなかなか大変でした。2限のために前日までに予習をしたり、5限のためにリーディングの課題を昼休みと3限を使って読んだりしていました。授業の後は、柔道の練習です。

水曜日の過ごし方:英語の授業が、英語だけで行われるというなかなか大変な授業のあとに、語学学校に通っていました。

木曜日の過ごし方:一限がある唯一の日ですが、一限にいくのはなかなか大変です。高校生のときは、自分がこんなに怠け人間になるとは思っても居ませんでしたが、大学生は総じて朝が苦手です。授業後は柔道の練習。

金曜日の過ごし方:英語の授業がこれまた、英語だけで、そのうえ先生の言うてることが聞き取りにくいという、なかなか大変な、けれども、内容は映画を見るという楽しい授業でした。授業の後は、柔道の練習。

講座PickUp!

比較芸術論演習   担当: 今橋映子先生

世界史や日本史で、文化史を習う際に、みなさんは「何でこんなことやるんやろうなぁ」という感想を抱いたことはありませんか。もしかしたら、この比較芸術論がそんな疑問を解決してくれるかもしれません。

この授業が中心として扱うのは、明治時代にどのような形で「美術」という言葉が作られていったのかという問題です。普段は、この言葉の来歴など気にもしませんが、美術という言葉は明治時代に作られた言葉なのです。また、その最も早い使用例の一つでは、音楽をも含めることの出来る言葉として使われていました。「美術」という言葉がどのような変遷を経て今現在の形になったのかを探求することは、人々が何を重要だと考えたのかといった美術を巡る思想的な変革をも探求することにつながるのです。

では、なぜ、この授業が文化史への素朴な、けれども授業を受けているときには一応聞いてはいけないことになっている問いに対する一つの解決になるのでしょうか。それは、この授業が「美術史がなぜできたのか」という質問にある程度答えてくれるからです。実は、大雑把に言うと、日本美術史という壮大な「物語」の原型は、明治時代に近代国家として西洋列強に自国の文化的な力を誇示する必要に迫られた明治政府がつくったものなのです。明治政府は、自国に文化が存在することを示すために、「美術」という言葉を作り出す一方で、「美術」を巡る制度の整備も進めました。こういうことを知ると、いままで退屈に見えていた文化史に対する見方が変わってくるかもしれません。

この授業では、こうした理論的な認識に立脚しながら、一つの対象、政府が主催した初の美術展覧会である文部省美術展覧会にフォーカスを絞り、実際に当時発行された新聞や雑誌を用いながら、当時どのような言葉が美術を巡って交わされていたのかを探っていきます。実際に明治時代に刊行された雑誌や新聞を読むのはなかなか大変でしたが、知的興奮に満ちたとても刺激的な授業でした。

アメリカ文学テクスト分析   担当: 諏訪部浩一先生

この授業では、19世紀のアメリカ文学の歴史を、毎回一篇ずつ短編小説を読んでいくことで概観するものです。扱う作家は、ホーソーンやメルヴィルなどの大物から、1970年代ごろから女性学の影響で再評価がすすんだギルマンなどです。冬学期に、20世紀の代表的な作家(ヘミングウェイ・フィッツジェラルド・フォークナーのモダニズムを代表する三人の作家から、80年代の村上春樹の翻訳でも有名なカーヴァーまで)を扱うので、この二つの授業を取ると、短編小説でアメリカ文学の歴史を概観できるようになっています。

授業の形式は、授業までに課題の小説を読んでいき、それについて少人数のグループで議論をするというものです。生徒同士の議論の中で自分の見えなかったものが見えるようになるだけでなく気鋭の米文学者である先生の鋭い分析の一端を垣間見ることの出来る非常に面白い授業です。

複合系計画論   担当: 藤垣裕子先生

みなさんは、科学という言葉を聴いてどのような活動をイメージするでしょうか。ひとり研究室にこもって、黙々と研究を進める科学者?スペースシャトルが宇宙へと飛び立つ映像?難しそうな数式のたくさん詰まった教科書?科学博物館の展示?それとも・・・

この授業では、科学を社会とのかかわりでとらえようと考えます。

そもそも、多くの場合、科学者は一人で研究を進めているわけではありません。研究の規模が大きくなってきた現代科学では、何人かの規模から、大人数で行う研究まで、グループで研究することが普通です。このような科学者の組織がどのような形で形成されているのかを探求したり、科学者が研究することの出来る裏側には、どのような政策があるのかを考えるのがこの授業の一つの目的です。また、つい最近、スペースシャトルチャレンジャー号の事故が起こってしまいましたが、NASAの組織の複雑さがこのような事故につながってしまったということはないでしょうか。小学校から中学校の間に行われる理科教育は科学政策とどのように関わるでしょうか。どのような教科書が、よい教科書なのでしょうか、そもそも、どのような内容が教えられるべきなのでしょうか。科学博物館は、科学の知識を伝えるのにどの程度役に立っているのでしょうか。 こうした問題にすぐに答えをあたえることは困難です。ただ、ひとつひとつの事例を分析していくことで、問題が新しい見え方をしてくることを一人一人が体験することを目的として、この授業は生徒の具体的な事例分析の発表を主体にすすみます。発表にみんなからのコメントをもらい、探求を深めていきます。事例分析は、Winnyを巡る裁判などの情報技術に関わるものや、風力発電の設置場所の選定を巡る問題など環境問題につながるものなどかなり幅広いものです。科学と社会の接点を見てみたいと思っている人におすすめです。

Q2. 思い出の単位について

大学一年生の冬学期に受けた英語の授業は、僕の進路選択を変えてしまうほど衝撃的なものでした。その授業では、アメリカの小説家であるレイモンド・カーヴァーの『大聖堂』を扱いました。一つずつ短篇をよんでいく授業だったのですが、テクストもすばらしいし、それを巡る先生の分析もすごいしで、毎回の授業が新しい世界を次々に開いてくれるように思えて、本当に楽しかったのを覚えています。

毎回の授業後に、関連する文献を聞きにいき、大学に入り立てだった僕にいちいち付き合ってくださった先生に感謝しています。大学の先生は、人にもよりますが、やる気さえみせれば、自分の質問に対して100でも200でも返してくれるので、みなさんも大学の先生とはどんどん仲良くなりましょう。研伸館の先生もそうですが。

この授業があまりに楽しかったために、哲学をやるんだと意気込んでいた僕は、いつのまにか、アメリカ文学という大きな海の中でおぼれる運命になってしまったわけです。

ドイツ語の試験のために、徹夜をした後、試験中に寝ちゃダメだからと、コーヒーをがぶ飲みした上に、カフェイン剤まで飲んで、学校まで自転車で思いっきりこいで行ったら、心臓が異常な動きをしだして、本当に死ぬかと思いました。こういうばかなことは絶対にしないようにしましょう。これでもやってきた単位は合格ぎりぎりの可だったので、人生の厳しさを実感した日でもありました。

夏休みに、アメリカ式で行われるという10日間の集中講義を受けたのですが、毎日英語で100ぺージ位のリーディングがあり、ひぃこらひぃこらいいながら勉強していました。これくらいの量のリーディングを毎日こなす授業は日本語でも余りないのですが、アメリカの大学生はこれ以上のことをやっているそうです。こういう話を聞くと、もっとまじめに勉強せなあかんなぁとも思うのですが、正直しんどいなぁとおもってしまって、なかなか勉強しないのが実情です。

Q3. 身の周りにいるすごい人物を教えてください。

東浩紀のもとで、批評家としてデビューした子が同じキャンパスにいます。面識があるわけではありませんが、ものを書くことを目標にしている人間としてはうらやましい限りです。

彼は、特に目立った例ですが、みんな一芸に秀でていて(楽器が弾けたりする人はかなりいますし、何ヶ国語もしゃべることが出来る人もいます。ある友人なんかは酔っ払うと、ロシア語で絡んでくるそうです。その現場に居合わせなかったのが残念だ。)、ただ受験勉強が出来る人間じゃないんだなぁというのは日々感じます。

Q4. 学食の好きなメニュー上位3つ

1位:シンプルラーメン(ようするに、具の入ってないラーメンです)

2位:カレーライス

3位:うどん

なんといっても、安さが学生食堂の売りです。ラーメン一杯200円というのは、ドウ考えても反則でしょう。

一方で、東京大学駒場キャンパスには本格的なフレンチが楽しめるレストランがあります。800円でランチがたべられるとあって、マダムに大好評です。というか、マダムしかいません。学生にはなかなかハードルが高いですが、おいしいので、試してみる価値はあります。

Q5. 今の大学に入って一番良かったと感じることは何ですか?

高校の時に、大阪のイベントで「絶対東京に会いに行きます!」といったアイドルに、秋葉原のイベント会場で会えたこと。

Q6. これからあなたの歩んでいく道はどのようなものになっていきそうですか?また、周りの友達の進路はどういった方面が多いですか?

研究者を目指しています。そのためにまずは大学院に進むことを考えています。理系の子は大半が大学院への進学を考えているようです。友人の中には、公務員試験を目指して、ダブルスクール(予備校などに通いながら、大学にもいくこと)をしている子もいます。もちろん、民間企業に就職しようと頑張っている子も居ます。みんなに負けないよう、頑張らなくてはと常に思っています。

Q7. 大学生活で打ち込んでいることを教えてください。

柔道部で活動しています。たまに、何でこんなにしんどい思いせなあかんねやろ、とおもったこともありますが、試合で三角締めが決まったときのうれしさは、なかなかことばではいいあらわせ無いものがあります。そんな僕は、やっぱり柔道バカなんでしょう。

Q8. 自分の大学を目指している高校生へのメッセージをお願いします。

大学では、学びたいと思ったことが思いっきり学べて、最先端の知に容易にアクセスできる場所でもあります。みなさん目標目指して頑張ってください。