京都大学 文学部人文学科 2008年現役合格

M.K.さん

M.K.さん

出身高校
私立四天王寺高校(英数IIコース )
進学大学
京都大学 文学部人文学科

Q1. 大学の講義について教えてください。

大学の時間割
―――
1限 アメリカ文学講義 ――― 哲学特殊講義
2限 日本古代・
中世政治文化論
地理学講義 社会学講義
3限 東洋史学講義 文学部英語B 西洋近世哲学史
4限 行動・環境文化学
ゼミナールIII
――― 美学講義
5限 ――― 日本史学 西洋古代哲学史
―――
1限 キリスト教学 法学政治学英語B ―――
2限 中国語IIB ドイツ語学
ドイツ文学講義
―――
3限 国語学国文学購読 日本哲学史講義 ―――
4限 ――― 中国語IIB ―――
5限 ――― 西洋古典学講義 ―――

月曜日の過ごし方:4限後は少し図書館に寄るか、家に帰る。

火曜日の過ごし方:2限開始より少し早く大学へ行き、図書館へ。3限後は図書館で語学の予習。

水曜日の過ごし方:授業後は家に帰る。

木曜日の過ごし方:3限後は図書館へ。

金曜日の過ごし方:授業後は家に帰る。

土曜日の過ごし方:アルバイト

講座PickUp!

地理学講義   担当: 前期→米家泰作先生 後期→田中和子先生

前期は「『私』にとって地理的世界とは何か」をテーマにした、人文地理学の講義でした。初回授業でまず白紙が配られ、何も見ずに世界地図を描きました。日本人はヨーロッパ、特にイギリスとイタリアを実際より詳しく大きく描く傾向があるそうです。国名と地図がきちんと一致しているかのクイズもありましたが、いずれにせよ日本人は総体的にヨーロッパへの関心が強く、逆に中東への関心は弱いということが分かりました。自分の頭の中にある世界地図が、いかに個人そして社会の価値観を反映したものであるか、ということを実感しました。

「道に迷いやすい人はどのように空間を認識しているのか?」「自然環境によって人の性質は決まるか?」「好感度の高い県はどこか?」「県民性は本当に存在するか?」「風水はアジアの地理学の原点?」など、毎回身近な話題で楽しめました。昔の人々が描いた様々な世界地図を見られたのも良かったです。「地図」の概念を打ち壊されました。

また、現代は「エコブーム」とも言えるほど環境破壊への関心が高まっていますが、ほんの100年前までは「人が環境に作用するせいで環境が破壊される」ということは知られていなかった、という話が興味深かったです。人間と場所の深い関係を考えさせられる授業でした。

後期は中心地理論がテーマで、立地論を扱いました。平たく言えば、「どのような間隔でショッピングセンターを配置するのが最も効率が良いか」を理論的に考え計算で求める、というような内容です。久しぶりにコンパスで作図し、シグマの計算を使いました。前期より専門性が高くて少し難しかったですが、「計算でこんなことが分かるのか~!」と感心しました。

ドイツ文学講義   担当: 松村朋彦先生

ドイツ文学の作品を毎回1篇取り上げ、作者の経歴と時代背景に触れた後、テクストの抜粋を読み、映画・オペラ・舞台などの映像を鑑賞します。日本語のテクストなので、ドイツ語が分からなくても大丈夫です。俳優座の『セツアンの善人』の舞台を見たときは、「役者さんってすごいなぁ~!」と思いました。この授業は、作者と作品名は知っていたけれど実際に読んだことがなかった作品に興味を持つきっかけとなりました。個々の作家の特色はもちろんのこと、1年間授業を受けるうちに、ドイツ文学に脈々と受け継がれている伝統や、好んで用いられるモチーフも何となく分かっていきました。私は『変身』を読んで以来カフカを敬遠していたのですが、この授業を受けてカフカにはまりました。テクストは不変、解釈は多様、だから気になって考え続けてしまう…そんなところが魅力です。

美学講義   担当: 前期→吉岡洋先生 後期→平川佳世先生

前期の吉岡先生は、刺激的な髪型とお話…インパクト大です。一見美術と関係なさそうな話題も多いですが、授業は学生に答えを与える場所ではなくエッセンスを投げかける場所だということです。出席を全くとらないのに、話の面白さに惹かれて毎回それなりの人数が出席していました。

後期は15・16世紀のドイツ美術史の授業です。前期とは打って変わって、一般に“美術史の授業”と思われているような授業です。スライドを見ながら作品の特徴を地域・時代の流れの中で考察していきます。マルティン・ショーンガウアーという作家の版画が素晴らしかったです。もともと絵画は好きでしたが、この講義のお陰で版画や彫刻も楽しめるようになりました。

行動・環境文化学ゼミナールIII   担当: 板倉昭二先生他(リレー講義)

若手研究者の方々による、ご自身の研究紹介です。映画『ラスト・サムライ』に代表される武士道ブーム、偶然書店で見かけた“廃墟の写真集”、海外のドラマ『ER』における医師の立場…等々、研究を始めるきっかけはとても身近なものであることに驚きました。「武士道ブーム」の回の、「“伝統”と信じられていることの中には、実は19世紀に意図的・事後的に作り上げられたものであるものも多い」という話が印象に残りました。これまで受けてきた授業は、社会学理論やポピュラーなテーマの概説でしたが、この授業で社会学に対する新しいイメージを持てました。興味を持った出来事を社会とどう関連付けて説明するか、つまり「これを研究するのが社会学」という決まりはなく、「現象をいかに社会学的に捉えるか」が大事だと感じました。

Q2. 思い出の単位について

中国語の試験は、1回生の頃からこだわりを持って臨んでいます。大学生になると「単位が取れたらいいや(※60点で合格です)」と思ってほどほどに勉強する人が結構いるので、頑張れば満点やクラス1位が取れます!満点や1位になっても別に特典はないので、自己満足ですが。

特定の授業の単位で苦労したことはないのですが、文学部は試験よりレポートが多く、2回生は10個くらいのレポートを期日までに仕上げないといけません。それが大変で、レポートの期間中は結構みんなやつれている気がします。私は誰かに追いかけられて全力で逃げ続ける夢を連日見ましたし、ある友人はランニングマシーンの上を走って逃げ続ける夢にうなされたそうです。

Q3. 身の周りにいるすごい人物を教えてください。

社会学の伊藤公雄教授です。日本の社会学者はあまり現実の社会や政治に対して積極的に発言しない傾向があるそうですが、伊藤先生は行政に多く参加されています。授業も面白いです。学問の世界にとどまらず、現実の社会に関わっていらっしゃる姿に憧れます。

Q4. 学食の好きなメニュー上位3つ

1位:『豚汁』~105円で野菜をたっぷり食べられるのが嬉しいです。

2位:『やわらか豚味噌丼』~これに限らず味噌系のメニューは好きなので、あれば一度は食べてみます。

3位:『ひじきご飯』

Q5. 今の大学に入って一番良かったと感じることは何ですか?

2つあります。

1.いわゆる“自由の学風”

自由に使える時間があって、様々なものを見て何となく考えているうちに、何かが見えてくることがあります。強制される勉強量が多いと、それをこなすのに精一杯になってしまうかもしれません。「したいと思っていること」がまずあって、そのために必要なことを自分で考えて行う方が、同じ大変さであっても主体的になれると思います。特に文学部は、良く言えば自由・悪く言えば放任ですが、自分から求めていけばヒントはもらえます。そういう学び方をしたい人には良い学校だと思います。

また、東大出身の先生がおっしゃっていたことなのですが、首都に近いと研究内容が国の情勢に左右されやすいのに対し、京都はそのようなことを気にせず自由に研究できて楽しいそうです。

2.全学部が一つの敷地に集まっていること

広いので端から端まで移動するのは大変ですが、一応一つの敷地に集まっています。時間に余裕があれば他学部の授業を聴講することができます。学部ごとに雰囲気もやることも全く違うので、良い刺激になります。他学部の友人とも会いやすいです。

Q6. これからあなたの歩んでいく道はどのようなものになっていきそうですか?また、周りの友達の進路はどういった方面が多いですか?

私は大学院に進みたいと思っています。周りの友人たちは、就職か院進学かでまだ迷っている子が多いです。 文系で院に進むと身を立てるのがなかなか大変らしいので、みんな慎重になっています。

Q7. 大学生活で打ち込んでいることを教えてください。

2回生の1年間は、将来のことを考えたり、考えるための情報収集をしたりするのに時間をかけました。3回生から何を専攻するか、就活か進学か、といったことです。大学に入った時からぼんやり「院に行きたいなぁ」と思っていましたが、「文系で院に行くのは相当の覚悟が要る」と先輩に脅され(笑)、単に話を聞くのが好きなだけなのか、自分で研究したいのかをじっくり考えました。今は進学したいと思っています。

また、週1で個別指導塾の講師をしています。楽な仕事ではありませんが、説明して分かってもらえた時や、成績が上がったと報告してもらえた時は「やっててよかったなぁ」と思います。生徒さんたちの頑張りにこちらが動かされることもあります。大学生になると受験時に勉強したことをどんどん忘れていきがちですが、教えるために勉強するお陰で学力をキープできて有り難いです。

Q8. 自分の大学を目指している高校生へのメッセージをお願いします。

●受験勉強は受験以外に役に立たない?

受験生の頃にそう聞いて、殺伐とした気持ちになったことがありました。ですが、そんなことはありません。少なくとも大学に入ってから4年間、受験勉強で得た知識は直接または間接的に役に立ちます。特に英語力には自信を持って欲しいです。大学生になり、高校までに学んだ文法で読めない英文はないと分かって感動しました。「受験英語を勉強しても英会話はできない」という批判がありますが、約6年間日本で勉強しただけで、ネイティブの人でも読むのが難しいような英語の論文を読めるようになるのは、すごいことだと思いませんか?勉強した本当の意味や価値は、実は後から分かるのではないかな、と思います。今みなさんがしている勉強は入試で終わりではなく、ちゃんとその先に繋がっていますよ。

●京大に行く人は天才?

これも違います。一部の人は天才かもしれないけれど、大部分は普通の人です。それどころか「自分は要領が悪い」と嘆いている人たちが多いです。「絶対行く!」というこだわりを持って地道に真面目に頑張る人は、一歩ずつ目標に近づいていきます。他人より出来ないなら他人の3倍やろう、それでもダメなら5倍やろう…素質とか才能とか要領とかより大事なのは、こういう気持ちだと思います。受験中は色々我慢しないといけないですが、大学生になれば好きなことを存分にできるので、辛抱して頑張ってください!