京都大学 農学部 2009年現役合格

S.Y.さん

S.Y.さん

出身高校
兵庫県立神戸高校
進学大学
京都大学 農学部

Q1. 大学の講義について教えてください。

大学の時間割
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1限 ――― 海洋生物細胞工学 資源生物科学概論IV
2限 資源生物科学概論III 微生物学 ―――
3限 ――― 技術コミュニケーション
入門
―――
4限 海洋動物学 ――― ―――
5限 ――― 食品安全学 ―――
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1限 遺伝学II 土壌学II ―――
2限 植物生理学I 健康医療学概論 ―――
3限 ――― 英語 ―――
4限 ――― 植物環境ストレス学 ―――
5限 ――― ――― ―――

月曜日の過ごし方:唯一、朝が少しゆっくりできる日。授業の無い時間帯は構内の本屋へ行ったり図書館へ行ったり。

火曜日の過ごし方:教室移動の忙しい日。月曜日と同じく、授業の無い4限は構内の本屋さんへ。

水曜日の過ごし方:午前中で授業が終わる。水曜日はサークル活動があることが多いので、それまでは京都の町を散歩したり。

木曜日の過ごし方:昼食を終えたら金曜日の英語の予習。終わったらアルバイト@個別館シーア住吉校

金曜日の過ごし方:授業を終えたら木曜日と同じくアルバイト@個別館シーア住吉校

講座PickUp!

植物環境ストレス学   担当: 樋口 浩和先生他

2回生後期の授業の中で最も「面白い!」と感じたものの内の一つです。強すぎる光、弱すぎる光、極端な高温に低温、過度の乾燥や水分過多、土壌水分中の無機イオン量やpHなどが植物の生育にどのような影響を及ぼすか、またそのメカニズムはどういうものか、そして植物はそういった環境から受けるストレスをどのように緩和しているのか、人間はそれをどう手助けすることができるのか ― ということを非常に体系立った解説で分かりやすく納得させてくれました。授業がすごく分かりやすかったというのも大きな要素ですが、植物の持つ、自然に対する精緻で洗練された合理的極まるシステムの存在を知り、ますます深くまで知りたいという欲求にかられる、そんな授業でした。自然科学を研究しそれを食料および資源の利用や開発に捧げる農学部であるからこそ「人間はそれをどう手助けすることができるのか」は非常に大切な課題となります。1回生のうちにはあまり垣間見ることのできなかった、研究成果が農の現場に活用される様を目の前にドンと突き付けられた授業でした。

森里海連環学実習A   担当: 山下 洋先生他

夏休み中に、京都大学フィールド科学教育研究センターが全学に提供する4泊5日の集中講座です。京大はフィールドワーク大好きです。講座名に“A”とありますがそれぞれ実習の場が違います。日程さえ都合がつくならばA~Cすべてを受講できます。私は1回生のときAに参加し、京都大学が保有する芦生の研究林と舞鶴の水産試験場へ行ってきました。テーマは森林と里山と海洋それぞれの環境のつながりを学ぶこと。芦生研究林では森林におけるシカの食害とその防除について実際に研究している現場を見学させてもらい、付近の川やダム、舞鶴の海で魚等を獲ってアルコールで固定して水産試験場へ持ち帰り、胃内容物を調べたり種の同定をしたりしました。寝泊りをさせていただいた水産試験場では、早朝4時半ごろから起き出して釣竿を拝借し釣った小アジを皆でその場で素揚げにして食べたことも良い思い出です。夏季集中講座の一番の特徴は、教授との距離がとにかく近いこと。疑問に思ったことをすぐにその場で質問できる素晴らしい環境が用意されています。様々な生物をその手で直に触れることになりますので、苦手な方には若干厳しい授業になってしまうかもしれませんが、生物が好きな方にとっては特に格別な4泊5日になることを保証します。

海洋生物細胞工学   担当: 豊原 治彦先生

「細胞工学」という聞き慣れない言葉、要するにバイオテクノロジーと思って構いません。海に生きる生物の細胞をいじくりまわす術を学ぶ授業です。これだけ聞くとただのマッドサイエンスですが、絶滅した魚の凍結保存精子からその生物種を復元したり、水産資源となる魚の受精卵に成長ホルモンに関わる遺伝子を導入し生産量の増加を図ったりと、その目指さんとする処は有数の水産資源消費国の国民である私たちに密接に関わるものです。また、例えば水の抵抗が少ないサメ肌を模倣した競泳水着、汚れのつきにくいカタツムリの殻を模倣した水洗トイレなど身近にたくさんある「生物模倣」という概念とその利用についての授業がありました。そのほかバイオミネラリゼーションなど、ヒトには困難でありながら海に生きる生物には可能である、その能力を最大限に生かすためにはどのようにすればよいかという研究を紹介してくれる授業でした。水産資源は食べるためだけの存在ではありません。海の生き物の能力を如何にして引き出すかを考え、そしてその可能性を奪ってしまう生物多様性の低下を憂うことのできた授業でした。

Q2. 思い出の単位について

だいたい全ての授業について言えることならば、レポートで単位が取れる授業が、私は好きです。学内のパソコンや自分のノートパソコンを目の前に、画面にはWordとGoogleを起動させておき、机の上には通学中の電車の中で関連する箇所に付箋を貼っておいた参考書や教科書を置き、耳には音楽プレーヤーを接続して自分のペースでキーボードを叩けばいいのです。それに対して試験で単位が認定される授業は好きではありません。内容を覚えなくてはならないし、農学系の研究内容に関して中高生みたいに市販の問題集などあるわけもなく、覚えるのはそんなに容易なことではありません。「問題を何度も解き直して覚える、復習する」ということが、数学系や物理系はともかくとして私らのいるような生物学中心の農学系では不可能です。また、生物系の専門書は写真や図をカラーで載せるためか紙質が大変素晴らしく、なおかつページ数も多いのでお値段もまた素晴らしいことになっております。とある細胞生物学の権威のような、巨大なレンガのような本はお値段が5桁です、図書館で利用するばかりで流石に買いませんでしたが。

ある特定の授業に関して言えば、2回生後期の海洋動物学の試験勉強は頑張りました。「試験の半分はここから出します、覚えてきてくださいね」と先生が配ったプリントには、“軟体動物”“節足動物”などといった海洋動物の分類名と、それらに属する生物の和名がズラリ。写真や図は一切なし。スルメイカが軟体動物なのは流石にわかりますが、ユズダマとかリュウグウノツカイとか言われても何のことかさっぱりわからないので知らない和名を手当たり次第Googleで検索して画像を探して勉強していました。節足動物の欄にツノハリセンボンという名前があり、フグと違うんコレ?と検索したら随分とご立派なカニだったことは、今となっては良い思い出です。

Q3. 身の周りにいるすごい人物を教えてください。

京都市内ならどこにどの種類のトンボがいるかだいたい把握した理学部の虫好きな友人。彼は下宿先の冷蔵庫に、採集した虫を保管しておく部屋を設けてあります。虫がホントに大好きなだけで、人間もちゃんとした、とても良いヤツ。同じ生物系の人間として、尊敬します。

Q4. 学食の好きなメニュー上位3つ

1位:『おでん』~学食に限った話ではないのですが。

2位:『鶏レバー生姜煮』~どちらも、とりあえずご飯が進みます。

3位:『若鶏醤油上げ』~なんといってもコストパフォーマンスがいい。この質と量で168円は安い。

Q5. 今の大学に入って一番良かったと感じることは何ですか?

自分の興味ある分野かどうかなど関係なく、アカデミックな話題を何の遠慮もなしに話しあえる、そんな友人に恵まれたことです。高校ならばまだしも、中学でそんなことしたら100%ガリ勉扱いでしたでしょうからね。スポーツや音楽など、そういった自分の趣味について語るのと似たような感覚で、自然科学や人文・社会科学について語り合えるような環境はそうそう得られるものではないと考えます。自分の興味ある分野についても、趣味についても、ふざけたふりして割と真剣なそうした友人は本当に大事にしたいと思います。

Q6. これからあなたの歩んでいく道はどのようなものになっていきそうですか?また、周りの友達の進路はどういった方面が多いですか?

とにかくは生物に関わる道に進みたい、ひとまず大学院修士課程は卒業しよう、今のところはそれだけです。農・林・水・畜、4回生になりどこに重きを置く研究室に配属されるかは、まだまだこれを書いている現在は2回生である私にはピンとこないものがありますが、どこに配属されようがそこに生き物がおるならば楽しくやってやる、それくらいの自信は持っているつもりでいます。

周りの友人は理系、所属する農学部を除けば特に工学部の友人が多く、大学院に進学する者が多いです。宇宙が好きな友人、エネルギー資源の開発をしたい友人などがいます。

Q7. 大学生活で打ち込んでいることを教えてください。

高校から始めたバドミントンを大学でもサークルで続けています。2010年度は、大好きなそのサークルで会長を務めさせていただきました。同期、先輩、後輩を含め多くのメンバーに迷惑をかけ、なおかつそれでも助けていただいたことには、本当に感謝してもし切れるものではありません。バドミントンというスポーツが割ととっつきやすいということもあるようで、大学から始めるという方がサークルにはたくさんおられます。部活のように打てる人同士常時本気で試合試合というのももちろん楽しいです、それは紛れもない事実です。でも、大学から始めた初心者の皆さんにバドミントンを教えたりしながら、笑いながら羽を突くのもすごく楽しいんです。その両者で楽しさを量るモノサシはまったく違っており、甲乙はそもそも付けられるものではありません。競技としてのバドミントンは、強烈な興奮とそれと同等の疲労があります。スポーツですから当然です。しかし、遊戯としてのバドミントンの面白さは他の追随を許しません。同じく室内競技である卓球やバスケを愛する皆さんから反感はあるでしょうが、そんなもん、申し訳ありませんが知ったこっちゃないです。好きなもんは好き、それが一番面白い、それだけです。

Q8. 自分の大学を目指している高校生へのメッセージをお願いします。

合格した身だからこそ偉そうな口を叩きますが、合格って本当に通過点でしかないです。だから合格のその先にあるモノにワクワクしながら勉強してください。京都大学に入学すると、「合格おめでとう、さぁ、君はこの学部で何を勉強したい?」という具合に、多くの選択肢が用意されています。貴方がやりたいことを見つけられるに充分すぎる数の選択肢が用意されています。きっと皆さんは私なんかよりもよく勉強してはると思います。だからどうか、最後で失速しないでください。最後で失速しないためには、とりあえずのゴールラインよりも少し先をめがけて走る必要があります。50メートル走と同じですよね。

偉そうなコト言うてゴメンナサイ、ではでは、いずれ大学でお会いできることを楽しみにしておきますね。ごきげんよう。