和歌山県立医科大学医学部医学科 2015年現役合格

H.W.さん

H.W.さん

出身高校
国立大阪教育大学附属天王寺高校
進学大学
和歌山県立医科大学医学部医学科

Q1. 大学の講義について教えてください。

  <2年次の時間割>

大学の時間割
―――
1限 細胞生物学 基礎医学PBL  細胞生物学
2限 細胞生物学 基礎医学PBL  細胞生物学
3限 系統解剖実習 基礎医学英語 系統解剖実習
4限 系統解剖実習 基礎医学英語 系統解剖実習
5限 系統解剖実習

3年次基礎配属説明会

系統解剖実習
―――
1限  細胞生物学 生化学 ―――
2限  細胞生物学 生化学 ―――
3限 系統解剖実習 地域医療学 ―――
4限 系統解剖実習 基礎医学英語 ―――
5限 系統解剖実習 基礎医学英語 ―――

月曜日の過ごし方:出席があるので1限から授業に出ます。午後は約4時間解剖実習をした後、17時から22時までアルバイトをします(個別指導塾に行った後に家庭教師に行きます)。次の日は部活の朝練があるので早め(1時頃)に就寝。

火曜日の過ごし方:朝の6時45分から部活の朝練があります。2限はPBLという少人数(10人くらい)と教授1人でのグループワークです。私のグループは肥満がテーマで、各自調べてきたことを発表してディスカッションしていました。午後の授業には出たり出なかったりです。15時から19時まで部活をしたあと部員でご飯に行ったりしていました。

水曜日の過ごし方:月曜と全く同じです。

木曜日の過ごし方:月曜と同じですが、午後は解剖が終わり次第部活に行きます。21時まで部活のあと部員とご飯に行ったりしました。

金曜日の過ごし方:1限から出席があるので学校に行きます。午後は行ったり行かなかったりで、友達と昼ご飯を食べに行ったりです。17時から22時までアルバイトです(塾と家庭教師)。

土曜日の過ごし方:9時から17時半ごろまで部活です。その後に部員でご飯に行ったりします。

日曜日の過ごし方:だいたい試合がありました。ない時は自主練をしているかテスト勉強、時たま実家に帰って愛犬を撫でていたりですが、ほとんど休みはありませんでした。

講座PickUp!

数学A(担当:武田先生)

この教授は非常に厳しい方で、授業には遅刻・私語・退出後の再入室は厳禁です。教授が来られるとまず部屋の鍵を閉まられますので遅刻して入ることは不可能です。私語をすると出て行きなさいと言われるので速やかに退出します。授業には出席しなくても良いというスタイルなのでやる気のない人は来ないで欲しいということです。非常に理にかなっています。生徒の3分の1くらいしか出席していません。

私は全回出席しましたが内容は分かりやすいです。テストは出る問題はある程度決まっていますが記述に非常に厳しいため、相当数学力がある人以外は先輩から代々受け継がれている完璧な答案なるものを15題程一語一句語尾まで確実に暗記してテストに臨みます。ただ、その厳しい採点も論理的に少しでも間違っているものを減点しているだけなので、何点減点しているか等はさておき非常に理にかなっています。

このテストでは例年約3分の1の生徒が落とされるため皆必死です。また、答案用紙についている消しカス等も文字としてセロハンテープで貼り付けて採点されるようなので、テスト終了2分前くらいからは消しカスを払うカサカサという音が教室全体に響きます。一度勇気のある人は消しカスを文字の形に並べて提出して受かるかどうか試してみて欲しいと個人的には思っています。

この方が和医大の入試の数学を作問し、採点していると考えると、果たして受験生の記述答案は一体どれだけ減点されているのか気になります。大学の試験の要領で採点して点数を取れる受験生はまずいないでしょう。

系統解剖実習(担当:森川先生)

医学部といえば解剖実習だと思って入学される方も多いかと思われます。約3ヶ月間、1回3〜4時間の実習を週3回行います。ご遺体1体を5人のグループで3ヶ月かけて細かく解剖していきます。神経や血管を切らないように綺麗に取り出していく作業は大変緊張感があり集中力を要するためなかなか体力が必要です。5人で身体の部位を分担して、1日の実習の最後に担当の部位を説明しあって情報共有します。私は頭頸部を担当しました。首には驚くほど多くの細い神経が通っておりなかなか難しかったですが、私は細かい作業が好きで得意なので非常に楽しく飛ぶように時間が過ぎていきました。

解剖実習を通して1番印象に残っているのは心臓を切り開いた時です。心臓の中は細かい造形物が多く、これが人間の中で生まれてから死ぬまでずっと動いていると考えるとなかなか神秘的であり感動しました。

医学部に入って2年ですがこれほど勉強になり、かつ有意義な時間は他になかったと思います。真面目にやって良かったです。医学部に入った皆さんは是非解剖実習には積極的に参加して欲しいです。

ケア・マインド(担当:色々な先生が担当しておられます)

この授業を真面目に受けている生徒を私はほとんど見たことがありません。具体的には医療に関する患者さんの立場や、日本における差別問題などについての教養を深め、かつ患者さんの立場に立って親身に考えられる医者になるということが目的となっています。テストはないため平常点で評価されます。

私はある程度出席し、レポート等もある程度真面目に書いたのですがDの評価を食らったのでもうよく分かりません。このような評価がGPAに使われます。余談ですが、和医大ではテストにギリギリで受かっても落ちても評価は同じDをつけられることが多々あります。よって、学年末に出る学年順位でフル単なのに110人中96位、なんて人が出現してしまいます。この評価方法は如何なものでしょうか。そしてこの順位により今後様々な研究室配属などが決められます。まあしっかり勉強すれば良いだけのことなのですが、何だか腑に落ちないのは私だけではないはずです。

話題が逸れてしまいました。ケアマインドの中で私が唯一感謝していることがあります。夏休みの課題レポートの中に、祖父母に死生観を尋ねてレポートにする、というものでした。ほとんどの友人は創作を書いていましたが、私は真面目に聞きに行きました。祖父母は真剣に語ってくれ、私も私の母も祖父母も号泣しながらその話を聞きました。本当に貴重な経験になりました。これは録音しているのですが、一生大切にしなければならないデータになりました。

真面目に聞きに行き、真面目にレポートを書いたのですが、創作勢がA〜Cを取る中私はDでした。そんなことがどうでもよくなるほどの貴重な経験をさせていただいたのでケアマインドには感謝しています。

Q2. 思い出の単位について

やはり前述の武田先生の数学の試験勉強はなかなか印象に残っています。ですが辛さや印象から言えば骨筋でしょうか。コツキンと読み、骨学筋学の略称です。これは全身の骨と筋肉を英語で隅々まで覚え、筋肉の動きや関節の動きや仕組み、またそれぞれの動きを支配している神経もすべて覚えなければなりません。また、骨は名前だけでなく骨の部位も英語で覚えます。骨の中にも尖ったところや凹んだところ、ザラザラしたところがあり、それぞれに名前が付いています。すべて合わせると膨大な量になり、非常に大変でした。

。また、これは2年生の5月にテストがあったのですが、私が初めて落ちたテストでもあり非常に印象に残っています。医学部にテスト期間のようなものは形式上でしかなく、毎月何かしらかのテストがあります。2年生の5月と6月にはテストが6個あり非常に忙しく手が回らず、また部活も忙しくテスト前でもほとんど休めないため、疲れ切って落ちてしまいました。

Q3. 身の周りにいるすごい人物を教えてください。

学長先生です。心臓外科医の方ですが、本当に豪快でかっこいい方です。まるで自称進学校のような和医大の教育の中で唯一の良心と言えると思います。勉強はもちろん大切ですが部活や人間関係も大切に、大学時代に様々な経験を積んで欲しいと仰っています。

Q4. 学食の好きなメニュー上位3つ

1位:かけうどん

最も安いです。出汁があまり効いていないのと麺が短いのが玉に瑕です。今年からネギ多目ができなくなったのも不満です。おすすめトッピングは温泉卵とワカメと大量の天かすです。

2位:とり天

大分名物で、大分に旅行に行った時に食べたものの劣化版といった感じで、美味しいです。

3位:味噌汁

金欠時には家から晩御飯の残り物などを昼食に持っていきます。そんな時、経った20円で不味い飯が定食に早変わり!体も財布も温まります。

番外編:カレーライス

大人も子供もみんな大好きなカレーライス。これを不味く作るのは本当に至難の技だと思います。しかし和医大紀三井寺キャンパスのカレーはなんだか臭い風味がします。何故なんでしょう。人参、玉ねぎ、じゃがいも、お肉、そしてルーとお水。どうして臭くなるんでしょうか。

全体を通して生協のご飯は美味しくないです。高校の方がメニューが豊富で美味しかった。でもお母さんのお弁当が1番美味しいです。母の偉大さを教えてくれます。

Q5. 今の大学に入って一番良かったと感じることは何ですか?

まず和医大の1番いいところは和歌山にあるところです。和歌山にあると何故いいか。大阪が隣なんです。どこか遠くの僻地、例えば福○県とか、どこかの地理教師の方が無くなっても誰も気づかないと仰っておりましたが、そんな僻地に比べて和歌山は大阪まで電車で90分、1000円と少し。素晴らしい立地です。

それから海が近いところも良いです。海まで自転車で10分ほどです。私は釣りが好きなので最高の立地です。テストと部活が忙しすぎて去年は2回しか釣りに行けなかったですが。その日の朝に海辺BBQを企画してBBQセットを買って海へGO!なんてことも可能です。

ただ南海地震が起こると40分で大きな大きな津波がやってきます。頑張って逃げます。

今までふざけていましたがこれが最も良いところかもしれません。それは、センター試験が80%前半でも普通に受かるところです。そんな国公立医学部は他にあるでしょうか。和医大に来た理由を県外生に聞いて見ると95%がセンター試験を失敗したからと答えます。残りの5%は和歌山県が近いからと答えます。都会に無いのでレベルがそんなに上がることもなく、医科大らしい難易度の高い2次試験をレベルの低い中で争うことができるので非常に受かりやすいと思います。そう、和医大はセンター失敗組の最後の砦なのです。

ただ、私は本番の82.9%が自身初の80%台であり、最高記録だったのですが。それまでの自己ベストは桃パックの77%でした。和医大は社会の傾斜配点がそこそこ大きく私は難化していた地理で92点を取ることができ、傾斜をかけると84%になりました。南先生の授業を最前列で受けていたおかげで受かったと言っても過言ではありません。

Q6. これからあなたの歩んでいく道はどのようなものになっていきそうですか?また、周りの友達の進路はどういった方面が多いですか?

私は外科医になりたいので、何科に行きたいかはこれから勉強して決めますが、解剖実習で心臓に感動したのと学長先生に憧れているのとで心臓に関わりたいと思っています。ただ憧れているだけなので、今後の需要などを考えて自分の憧ればかり追うのではなく堅実に決めたいです。医者になった目的は病気の人を助けることなので外科医になって助けられたら何でも良いです。大門未知子みたいに「私失敗しないので」って言い放ってやりたいですね。もちろん大門未知子みたいに凄まじい努力をして良い医者になった後、ですが。

Q7. 大学生活で打ち込んでいることを教えてください。

部活です。練習はハードで上下関係もしっかりしていますが、楽しいです。部員が減少しており少子高齢化が進んでいるのが非常に悲しいですが。

ただ、厳しい部活の中で人間関係は非常に良いものが育まれ、仕事を任されると責任感が育まれ、人間形成の一環として非常に役立っていると感じています。入った頃は仕事もできない、周りも見ることのできない無能だったのですが、最近は少々マシになってきたのではないかと自分では思っています。この調子で成長していきたいです。

また、上下関係が厳しいと書きましたがギスギスした感じではなく、飲み会での無礼講など非常に楽しいものとなっています。先輩と過ごす時間が僕は本当に大好きです。上下関係は医者の世界では大切だと思うので今のうちに慣れることができて良かったと思っています。

Q8. 自分の大学を目指している高校生へのメッセージをお願いします。

私は大阪の大学に行きたかったです。しかし私の努力量、能力では現役ではそれは不可能でした。良くも悪くもそれを和医大が拾ってくれました。私が受験に本気になったのは高2の3月3日、今は進学アドバイザーを引退された森さんと面談した時です。私の第一志望を叶えることは手遅れの状態でした。和医大に受かったことも奇跡ですし、運が良かっただけだと思っています。

私は今、研伸館に通っていた頃とは違い非常に辛い生活を送っていますが、後々にここにきたことを後悔しないよう精一杯生きています。医学部に入り医者になることができるという環境を得たことは私にとって奇跡です。他の大学を受けていたらおそらく落ちていたでしょうし、たくさん浪人をしたかもしれませんし、医者の道を諦めていたかもしれません。現役で受かる道を最後まで探すということは本当に大切なことです。時にはそれが希望に沿わないこともあるかもしれませんが、最終的な目標-私の場合医者になることでした-を見据えて、時には辛い選択をすることも必要だと思います。真の目標というのを見失わないでください。たとえ困難があっても、それを叶える最短の道を迷わず選んでください。

今、いまいち勉強に身が入らないみなさん、VODルームで寝ている場合ではありません。マクドで駄弁っている場合ではありません。部活も遊びも高校生でしかできないことを存分に楽しまなければなりません。高校時代というものは人生で最も輝いている瞬間のうちの1つでしょう。しかし、せめて英単語だけでも覚えていってください。そして私が森さんに相談することでやる気を出すきっかけを得たように、勉強に本腰を入れるきっかけを探してください。手遅れになると私のように大阪に憧れながら苦しい日々を送るだけでなく、あなたの真の目標がただの憧れで終わってしまうかもしれません。

私はこのレポートで和医大の印象が悪くなるようなことをたくさん書いてしまいました。しかし和医大の学生が思っていることを正直に書いたつもりです。このレポートが進路を迷われている生徒さんの役に立つことができれば幸いです。

私が受かったのはひとえに研伸館の先生方のおかげです。授業や相談にたくさん乗っていただきたくさん脅していただいた市道先生、厳しい授業で当てられるたびに心拍数を上げられながら数学力を引っ張りあげていただいた笹谷先生、市道先生とは対照的に暖かい言葉で励ましていただき、かつ本番の物理の問題を当てていただいた(授業中の雑談の際にほとんど同じ内容をお話しされていました)網干先生、全く英語ができない私を最後までみていただいた小山先生、入試前に手紙を配ってメンタルを支えていただいた祐介先生、私が最も恐れておりかつ1番合格の報告を届けたかった角辻先生、素晴らしい授業で私が最も好きで楽しみにしていた授業をしていただいた南先生、私に勉強というもののやり方をVODの画面の向こう側から叩き込んでいただいた中西先生(レギュラーVODでした)、近藤先生、榎先生、川﨑先生、内多先生、栗尾先生、義野先生、その他大勢の先生方、そして和医大を選んでいただいた森さん、みなさんのおかげで私は今を生きることができています。本当にありがとうございました。